この話は、特にプロ野球選手や社会人チームなどの投手に当てはまる内容だと思います。
今回は、プロ野球のスケジュールに合わせた話をしていきます。
私が、プロ野球に携わり始めた30年以上前は、チームのエースと呼ばれるような投手は、1~2ヵ月ほど、完全休養していました。
チームも、ローテーションピッチャーや、ベテランの軸になるような投手に関しては、オーバーホールと言って、温泉地に2~3週間ほど行って、ゆっくりとシーズンの疲れを取りに行っていたものでした。
私たち近鉄バファローズも、加賀温泉病院に宿泊し、最初の3日間は、人間ドックに入り、全身の検査です。それ以外の時間は、基本的にフリーです。温泉でゆっくりする選手。トレーナーにマッサージを時間をかけてしてもらう選手。ゴルフに出かけれる選手、様々です。そこには、まったく、練習やトレーニングといった考えはなく、ただ、ゆっくりとシーズンの疲れを取りに来るのです。そして、オーバーホールが終わり、自宅に帰ってきても、何もしません。フリーです。この時間を使って、心も体も癒されていくのです。エネルギーを充電するのです。もちろんボールなど全く握りませんでした。
しかし、ある時期から、投手の11月から12月の過ごし方が変わってきました。
シーズンが終わると、すぐに、来季に向けて、ウエイトトレーニングなどを開始するのです。メジャーリーガーの影響ではないでしょうか。最近では、11月や12月から積極的にトレーニングをする投手がほとんどではないでしょうか。
もちろん、シーズンですり減った筋肉を、強化し、来季に向けてよりパワーアップするという考えは素晴しいです。
しかしながら、しっかりと考えていかなければならないのは、心も体もしっかりとエネルギーが充満しているかどうかです。
「やらなければいけない、もっともっと、やらなければいけない。」と思って、早くスタートを切ってしまうことは非常に危険です。
特に、まじめな性格で、心配性の選手は要注意です。
休まないのです。
私たちはよく、『がれている。』と表現するのですが、身体にエネルギーがみなぎっていない状態、かすかすの筋肉のような状態です。
皆さんも一度は、安くてパサパサな、鶏肉を食べたことありませんか?
まさにあんなイメージです。日頃から、たくさんの体を治療しているトレーナ―さんなどは、わかるのではないでしょうか。
私の尊敬する、鍼の先生も同じようなことを言われています。
水分やエネルギーで満たされていないのです。そんな状態で、トレーニングのスタートを切っても効果も期待できず、来シーズンに対して私は不安を抱きます。
皆さんは、競走馬が、有馬記念などが終了すると、馬たちは、北海道などの牧場に行って、放牧されるのをご存じですか?
ただひたすら、草を食べ、寝る、ゆっくりする。大自然の中でどんどん肥えていきます。エネルギーを蓄えるのです。
そして、また季節が来ると、栗東トレーニングセンターなどで、トレーニングを開始し、レースに備えるのです。
まさに放牧です。
もちろん、今年一年が不甲斐なく、あまり登板機会がなかった場合などは、早く始動し、来季に向けて頑張っていかなくてはなりません。
しかしながら、シーズンでかなりの負担をかけて登板していたような投手は、心も体もぎりぎりの状態でシーズンを終了していたはずです。
そんな選手は、まず休む。心も体もエネルギーで満たされるまで休まないといけないと私は思います。
いつも言いますが、やればいいってもんじゃないのです。人間の体なんて、そんなに簡単なもんじゃないんです。すべてをひとくくりにして考えてはいけないのです。結局しっかりと、心と体がエネルギーで満たされないまま、スタートを切ると、必ず、来シーズンでひずみが出てきます。結局、後戻りするのです。
プロなら、強いものを目指すのなら、屈強な心と体を作り上げようとするでしょう。鋼のような肉体と精神を。それも理解できます。しかし、それをするにもエネルギーが満たされていないとだめです。
いつも自分の、心と体と対話してください。
本当に、今、強化を求めているのか?
本当は休ませたいと感じているのか?
どちらですか?
何もしないことは、さぼっていることではありません。休養が必要なこともあるのです。
放牧が必要な時もあるのです。
有名選手が、トレーニングを開始した。と、マスコミの情報が流れても、あなたはあなた、その人と同じコンディションではないのです。
自分と対話してください。もっと自分の身体と話してください。自分の事を知ってください。
今自分は、何を求めているのかを。
『メジャーリーガーがやっているから。』・・・
関係ない! だって、日本とアメリカとスケジュール全然違うじゃないですか。
そんなことを無視して、真似だけしても自分のものにはなりませんよ。
まず大切なのは自分を知ること。そして本当にそれが必要なら取り入れればいい。
情報だけを追うな。
自分を知れ。
コメント