ティーは、ネットの当たっている場所をみろ

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私は、その日の試合や練習メニューの進行状況によって、自分の指導するトレーニングやコンディショニングの指導にちょっとした空き時間ができる時があります。

そんな時には、ブルペンに行って投手のピッチング練習を見たり、バッティングゲージの後ろからフリーバッティングを見たり、横や、後ろから守備練習を見たりするようにしていました。

ティーバッティングの練習もその中の一つです。

ビジターの試合(遠征)に行けば、私たちの練習(ビジターチーム)がホームチームの練習の後に行われるので、私たちが、球場に到着する頃には、ホームチームの選手達が先にバッティング練習などを行っています。

先に練習するために、ホームチームは、練習が終わっても、試合開始まで時間があるので、バッティング練習の後半の組は、ベテランやレギュラー組、外国人選手などの中心バッターがちょうど練習をする時間になります。

そして自分のフリーバッティングの順番の一つ前には、必ずゲージの近くで、ティーバッティングをして、フリーバッティングの準備をしています。

このあたりの時間になると、やはりプロ野球でも、成績を残している良いバッターが打っているので、ティーバッティングひとつとっても素晴らしいものがありました。

またチームによって、選手によって、バッティングコーチによって、一口にティーバッティングの練習と言ってもいろいろな練習方法を見ることが出来ました。

いろいろ考えて練習しているんだなぁと、注目してみていましたね。

横浜時代の内川選手や、西武時代のカブレラ選手もいろいろ変わった練習をしていましたね。

 

そんなティーバッティングの練習ですが、皆さんはどこに、どんなことに注目して見ていますか?

指導者であれば、手の使い方、足の使い方、体重移動、股関節の使い方、スイング軌道、ミートポイント、頭の位置、目線、スイングスピード、力強さ、などですかね。

 

私も、トレーニングコーチではありますが、そのようなところを注目して見ていました。

バッティングコーチの言葉かけや、指導方法も見ていました。

 

そんなある日、確か、オリックスの春のキャンプ。しかもオープン戦が、高知県の春野球場で行われる日でした。その日はあいにくの雨になり、試合が練習開始前に中止になりました。

仕方なく、春野の室内練習場で練習することになった私たちは、各班に分かれて、ランニング、コンディショニング、守備、バッティング、ティーバッティング、投手はピッチングなど、狭いながらもその日にできる練習メニューをこなしていました。

 

私もその日は、比較的時間に余裕があったので、若手やレギュラーなど、いろいろな選手のティーバッティングを見ることが出来ました。

いつものように自分の中でのチェックポイントを考えながら、見学していました。

 

すると、

『ん?何か違うなぁ?この選手とこの選手は。』

『何が違うんだろう?どこが違うんだろう?』

と急に思ったのです。

 

その日は、横に2つティーネットを並べて、2か所で同時に2人の選手がティーバッティングの練習をしていました。

まぁいつもの変わらない風景なのですが。

 

もちろん2人ともプロ野球選手なので、そこそこ良い音をさせて、力強く打っています。

しかし何か違和感を感じたのです。

1人は、高校卒の2年目の選手。まだまだ未完成ですが、その時期には1軍の練習に参加させてもらっていました。将来の期待の若手です。そしてもう一人は、大学から社会人を経て入団してきた選手です。彼も同じ2年目。しかし彼はアマチュア時代にも、社会人の全日本チームのクリーンアップを打ったこともある強打者です。

今年も、1軍の試合にも出場して、ヒットも打っています。将来の中心バッターの期待がかかっている選手です。

この2人の選手を横並びで、ずっと見ていました。

『何が違うのか?』

もちろん、社会人出身の選手は、年齢も25~26歳ぐらい、身体もしっかり出来上がっています。とても力強いです。逆に、高校卒の彼は、身長は高いものの、身体はまだまだ発展途上です。

しかし、その力強さだけではない、何かが違うのです。

『何なんだろう?』

『どこだろう?』

『フォームなのか??』

『ん~~。わからん。』

自分の立ち位置を変えて、見る角度を変えたり、近づいたり、離れたりしながら、ずっとその違和感の正体を探していました。

そしてある瞬間、ふっと何気なく自分の目線を変えたのです。

『ん??』

今までは、足の使い方、股関節の使い方、体重移動、手の使い方、スイング軌道、スイングスピード、力強さ、ミートポイントなど、その選手の身体の動きやバットの動きの事を中心に見ていたのです。

しかし、何気なく、私はティーのネットに目線を置いたのです。

『あ!』

『もしかして。』・・・

 

普通、ペアを組んで、1人がティーを投げてやります。もしくは、指導者がボールを投げます。

もちろん、ペースであったり、コースであったりは、その時々の目的に合ったことを選択してボールを投げて練習します。

そして、比較的打ちやすいボールを投げてあげるので、打者は、いいイメージで練習できます。

しかし、この2人、打ちやすいボールを投げてもらっているにもかかわらず。何かが違うのです。

もちろん、空振りをするようなことは決してありません。打ち損じもないでしょう。

しかし・・・

 

『あ!』

『もしかして。』

『これや!』

『ここが違う!』

それは・・・

 

1人は社会人出身の1軍でも成績を残している選手。

何球打っても、何球打っても、ネットの同じ位置にしかボールが当たらないのです。

それもかなり力強く。

そしてもう一人、高校卒、2軍選手。

1球ごとに、微妙にネットの違う場所にボールが当たっているのです。

もちろん、大きく離れてネットから外れるような打球を打つことはありません。

しかし、数十cmずれるのです。その時その時で。バラバラに。

ということは・・・

この選手は、ティーのような、打ちやすく投げてもらっているにもかかわらず、バットとボールが当たる位置が、数mm・数cmずれているんだと。また、ずれていなくても、角度や軌道やポイントが毎回毎回、違うんだとわかったのです。

ティーバッティングの練習は、打ったポイントとネットが近いため、どのように打球が飛んだのかわかりずらいです。しかし、彼の場合、ティーでこれだけのずれが生じているということは、実際の、ピッチャーの球を打ったとしたら、これ以上のずれが生じているという事になります。

『なるほど!』

『そら、成績に差が出るわ。』

『ん~~。しかし、練習って、角度や見方を変えることで、いろんなことが見えてくるんだなぁ。』

と、つくづく思ったのです。

 

後日、私はその時の事を、2人に別々に話しました。

社会人卒の選手には、

『この前、ティーを打っているところを、見ていたんだけど、いつもネットの同じ場所に打球が当たっていたよ。すごいと思った。素晴らしいと思った。これは続けていったらいいと思う。もしかして意識していないことかもしれないけど。これは、バッティングするときの何かのヒントになるかもしれないから。心の片隅に置いておいて。』と伝えました。

高校卒の選手には、

『この前ティーを打っているところを見ていたんだけど、ちょうど隣で○○選手が打っていたんだ。その選手は、いつも同じ場所に打球が当たていた。しかし、あなたは、いつもいつもバラバラだったよ。もちろん頑張って、練習していると思うけど、やはり、少しでも1軍で成績を残している選手とは、そのような次元でも、違うんだなぁと感じたんだ。だから、あなたもこれから、たとえティーのような練習でも、確実にいいポイントで、何回やっても同じ動きができるように意識して練習すればいいと思った。ちょっと、心の片隅い置いておいて。』と伝えました。

私は、トレーニング・コンディショニングコーチであるので、具体的な技術指導はほとんどしません。

しかし、トレーニングコーチだからこその、違った観点から、角度から、思考から、選手に少しでもアドバイスできればいいと思っています。

実際に子供たちや選手たちの指導や、お手伝いをされている方の中には、自分がその種目を経験していなかったり、スポーツ自体が苦手だったり、あまり経験したこともない方もたくさんいらっしゃるでしょう。

しかし、だからこそ、他の人には見えないものが見えてくることだってたくさんあります。

考え方だってたくさんあります。そんな事を私は大切にしていきたいのです。

専門家の方が、ずっとそのことばかりしてきた人の方が、見えなくなってきていることもたくさんあるのです。

もちろん、素人が、技術的なことを言うとおかしくなってしまうことも有ります。

専門の指導者が言っても、おかしくなることが多々あるぐらいですから。

しかし、ものの考え方や、視点、ヒント、私にはそう見える、私にはこう感じる。ということは、どんどん伝えていってあげたらいいと私は思います。

後は本人が、取捨選択すればいいことなので。

もちろん、チームに所属して、そのチームの指導方針や指導方法、作戦や起用法などに意見を入れることは違うと思いますけど。

皆が一つの目標に向かって、協力し、お手伝いをさせていただいている精神でやっていけばいいと思うのです。

これからも、たくさんの練習を見ることと思います。

たまには、違った角度で、目線で、思考で、距離で、選手たちを、子供たちを見ていってはいかがですか。

また、新しい何かに気づくかもしれませんよ。

そしてそれは、きっと、あなたたちの宝物になるでしょう。

 

 

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